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執筆者の写真Emi Norimatsu

広島大学「平和と芸術」講義 「ヒロシマを題材とする音楽作品と平和教育~平和を伝えるツールとしての音楽アウトリーチ~

更新日:2020年7月18日

2020年7月13日(月)8:50~12:00

(オンライン講義)


コロナウイルスの感染予防のため、ひと月ほど前に全面オンラインでの実施と決まってから、作品紹介の動画を作成したりしながらコツコツと準備を進めまして、3時間のオンライン講義を実施させていただきました。


「平和と芸術」の関わりを、文学、演劇、音楽などの様々な分野の観点から考えるという講義。

それぞれの分野の専門家の先生方が興味深い内容を講義される中で、わたくしも自身の研究テーマの「ヒロシマの音楽作品のアウトリーチ」と題して1コマ担当させていただきました。


自分にとって、ヒロシマ作品を演奏する意味、また、アウトリーチという演奏の形で何を伝えたいのかを考えた時、実はとても単純でして、

 「大事な人に、生きていて欲しい、と切望するのは誰もが同じ」

だから 聞いてくださる皆さんに

 「切望されているあなたも、生きていることを大事にして欲しい」

と、その時だけでも考えてもらえたら、ということかな、と思っています。


歌の音楽アウトリーチで不可避の課題が、

聞き手に「歌詞の世界観」を共感できる伝え方をいかに工夫するか、です。


今回のように「平和についての内容に結びつく講義」と定義づけされていたら、共感を伴わなくても受動してもらう形で、最初からヒロシマの作品を紹介することも可能だったかもしれません。

しかしそこはですね、聞き手にヒロシマの音楽作品に向き合う心の準備、おココロ脳みそストレッチ運動のような時間が必要なのではないか、ということで、アウトリーチに携わるアーティストとして、工夫をこらしました。

…ネタバレしないように、油断させて、忘れた頃に本筋のテーマの世界に放り込む、という荒技を目指しました(笑)


広島大学の学生さんからは、正直に真っ直ぐな感想をたくさんいただきました。

そもそも生演奏は出来ない環境なので、過去の自分の演奏音声と映像で音楽作品紹介をさせていただきました。

組曲の抜粋演奏を選曲する際、「この曲にはどういう風に反応があるかな。気付いてもらえるかな」と思って入れた曲に、印象を残してくださる学生さんが想像以上に多くいらっしゃいました。

音楽が専門でない学部の学生さんたちが、曲を聞いて何をどこまで受け取ってもらえるのか不安がありましたが、若者たちの感性は、音楽的な知識とか関係なく、自分なりに何かを感じ取ろうとしてくださっていたことに、感動いたしました。


そう、この、何かを感じ取ろうと考えてくださっている時間こそが貴重なのだと思うのです。

平和という宝物に向かって、「どう行動していくか」の手前の、動機の種まきが出来れば、というのが私のヒロシマの音楽作品アウトリーチの目標です。



私は広島出身なので、ヒロシマの話を中心に、幼い頃からしっかりした平和教育を受けることが出来ました。

 「この恩恵は、受け取った私で止めることなく、誰かにバトンを渡していくべきじゃないだろうか」

と考え始めたスタート地点は、10年以上前、演出家松本重孝先生演出の、芥川也寸志作曲のオペラ《ヒロシマのオルフェ》で「若い娘のちに看護婦」という役を歌わせていただいた時でした。

正直その時、役のこととか、音楽のこととか、どの位自分なりに理解していたんだろうと思い返すと赤面しそうですが、人生観を変えてくれた時間でした。

そう、あの時、難解な作品と役に悩んで、必死に考えつづけたあの時間が、今の私の情熱の源なのだと思います。


学生さんたちが、7月13日の3時間を、どのように記憶してくださるのか、或いはすぐに忘れてしまわれるのか。

彼らの人生の3時間をお預かりした対価をお渡し出来たのか、今後の自分の研究活動を叱咤激励してくれそうです。

#アウトリーチ #音楽で知るヒロシマ #ヒロシマの音楽

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